もう、きっと君と恋は始まっていた
『…由樹、ごめん……。
俺が知佳を一番大事にする。
だから、知佳のことはお前に渡せない』
崇人の最後の言葉に、私の胸が大きく高鳴った。
『…………………当たり前だろ?
俺だって、奈々を大事にするのに精一杯だっつーの』
由樹君はそう言って、奈々の手を引いた。
奈々は由樹君に手を引かれ、その甘い、優しい言葉に頬を赤くさせて、由樹君の胸の中で微笑んだ。
『……ま、もうお前には渡さないけど』
そう言って、崇人は悪戯っ子が何か悪戯できものを見つけた時のような、そんな意気揚々とした顔を見せる。
そして、同じような顔を見せる由樹君と視線を合わせたかと思うと、すぐに私の方に視線を変えて、
『知佳、簡単にキス、受け入れんなよ』
そう、怒った顔を見せ、そして私の唇に、自分の唇を重ねた。
崇人との初めてのキス。
軽く触れる唇の感触を感じ、崇人は唇を離して、そしてクスッと、いつものように勝ち誇った顔で微笑んだ。
『……ギリギリでキス…してないもん…』
私は崇人に反抗してみるものの。
『されてたまるか』
崇人は私の頭を軽くポンっと叩いて、そう言った。
13日目。
この奇妙な関係は、めでたく、終わりを…
『ね!みんなで明日ダブルデートしよー!?』
奈々の突然の提案に、みんなが奈々の方に振り向き、そして全員、奈々に微笑んだ。
『いいよ』
全員の返事は、その三文字。
明日は、どんな一日になるのか…私は崇人と目を合わせ、そして一緒に笑った。