もう、きっと君と恋は始まっていた
*14day もう、きっと君と恋は始まっていた
そして、最終日。
奈々の提案でダブルデートをすることになった私たち四人が選んだのは、この奇妙な関係をスタートさせてすぐの頃に行った、あの公園。
由樹君と奈々は別れ話を、崇人と私はお互いに別の人と幸せになろうね、そう言いあった場所。
『知佳、わりぃ!』
崇人は改札から出ると、すぐさま私の元に駆け寄ってきた。
『もー…遅いよ、崇人は!』
息を切らして、私の隣にやってきた崇人を見つめ、そう言った。
『……携帯のアラームをセットすんの忘れて寝ちゃったんだから仕方ないだろ?』
崇人は乱れた呼吸を落ち着かせながら、そう言ってきた。
『早く行かないと奈々たちに文句を言われちゃう!
もう、崇人、走って!』
私が崇人の背中を力強く押すと、崇人は“えぇ~”と不満そうに叫んでいたけど、私は素知らぬ顔をして、後ろから崇人を押していく。
でも、崇人は急に立ち止まった。
私は勢いよく崇人の背中に顔面をぶつける形になり、崇人に一言文句を言おうと、顔を上げる。
『ちょっと、急に立ち……』
でも、私の言葉を崇人は、私の手を引くことで制止させた。
『知佳、走んの遅かったよな?
俺、本気出して走るから』
何かを思い出したように、崇人がそう言い、そして私の手に自分の手を絡ませた。
『……崇人…?』
『俺に走れ、そう言ったのはお前だかんな?
絶対についてこいよ?』
崇人はそう言って、何故か勝ち誇ったような顔をしながら、私を見つめる。
崇人はクスって笑って…
だから、気がついた。
崇人、この間の陸上の県大会で優勝した…
私がそのことに気がついた、その時はもう崇人に手を引かれ、もう走り出していた。