もう、きっと君と恋は始まっていた
『ね、お取り込み中申し訳ないんですけど!
あたし達と待ち合わせてること、忘れてませんか?』
声の方に振り返ると、そこには奈々と由樹君がにこやかな表情で私たちを見ている。
『……あ、いたんだ』
崇人はポツリ、そう奈々達に言葉を返した。
『ちょっと崇人!
あんたねー…よく恩人たちに向かって、よくそんなこと言えたわね?』
奈々の言葉に、崇人はそっぽを向く。
『……奈々も由樹君も遅くなっちゃってごめんね』
私の言葉に由樹君が優しく微笑む。
『知佳、本当に良かったな。
でも、崇人はこんな奴だし?
崇人に呆れたら、俺のところに来てくれていいから』
由樹君の言葉に、崇人と奈々は勢いよく反応した。
『おい、人の彼女を誘惑すんなよな!』
『ちょっと由樹、まだ知佳のことが好きなの!?』
それぞれの言い分に、由樹君はクスって笑った。
『俺が好きなのは奈々。
知佳が好きなのは崇人だろ?』
由樹君の言葉に奈々は顔を赤らめ、崇人は不満そうに私の方に視線を向けてくる。
『……私が好きなのは、崇人、崇人だけだよ?』
私がそう、崇人に声をかけると、崇人は満足そうな笑みを見せる。
崇人こそ、単純、そう心の中で思ったけれど、また不満そうな顔をされても困るし…