もう、きっと君と恋は始まっていた

*1day 由樹との朝





昨日のカフェで、突然の奈々の告白。


あれから一晩が立って、私はこうして学校のすぐ近くの駅で待ち合わせている。





『はよ、知佳』


そう突然、背後から声をかけられ、振り向くと、そこには奈々の彼氏、いや元彼とでもいうべき人、由樹君が微笑みながら立っていた。





『…あ…うん……あの…おはようございます…』



何故だか敬語になってしまう私。


だって、それは仕方ないよね?



だって、由樹君は、ずっと片想いをしていた相手だったし。


それにこんな風に待ち合わせて、二人で行くのは初めてなんだから。






『なんで敬語なの?』



『…え……そうでございますよね……うん…えっと……』



『俺たち、昨日から彼氏、彼女の関係になったのに、水くせー』



由樹君はそう言って、意地悪く微笑んだ。



いや、だからね、その微笑みが、というか、あなた、というその存在自体が私にはまぶしすぎてですね…?



でも、そんな恥ずかしいことを本人の前で言えるはずもなくて。

私は、ただ、その場で黙ってしまった。






『知佳は、俺の彼女なんだからさ?
 あんまり距離を感じさせないでよ?』




だーかーら!!


そういう言葉も禁止ですよ!!





『…え…あ…うん……』



そう言って、俯くことしかできない私。




別れるとき、崇人も言ってたよね。


私はまだ由樹君のことが好きなんだって。


あの時は、もうこの想いとは、この恋とは離別できたと思った。




けど。


こんな風にドキドキしてるのは、崇人も言ってたとおり、まだ好きってこと、なのかな…?





『知佳?』


由樹君がすんごい優しい声で、私の名前を呼ぶから、心の中がキュンってなった。



顔を上げると、そこには声と同じくらい、優しい目で私を見つめてる由樹君がいる。。




そうだ、私、こういう目をする由樹君のことが好き、だったんだ。




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