もう、きっと君と恋は始まっていた
『知佳?』
もう一度、由樹君に呼ばれ、ハッとした顔で由樹君を見る。
『知佳さ、たまにどっか行ってない?』
クスクスと笑いながら、由樹君はそう言うけど。
『…どっか…え……あ、行ってないよね…?』
しどろもどろな私を見て、由樹君は更に笑った。
『何言ってんの、知佳?』
あ…。
由樹君にそこまで言われたところで、今までの会話を振り返った。
由樹君のどっか行ってないは“意識”の話で、それなのに、なんで私は“行ってないよね?”と疑問形で返したんだ…?
『……あ……ごめん…』
うぅ…ダメだ。
由樹君と二人きりとか心臓がもたないよ…
なんか変なことばっか言っちゃうし…。
『なんで謝んの?
俺、そういう風にあたふたしちゃう女の子、結構好きなんだけど?』
ひゃぁぁぁぁぁぁ!!
“好き”とか簡単に出さないでよねー!!
そういう仕草とかが好きとか分かってるんだけど、元好きな人から言われたら違う解釈で受け取りたくなるんだよー!!!!
もう、完全に頭真っ白な私。
それを見た由樹君はクスって笑って、私の頭をポンポンとしてくれた。
『……へ?』
一気に顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かった。
もう体全体で熱を帯びてるのも分かってる。
『知佳って、そんなに俺のことが好き、なんだな』
いやいや、そんな普通に人の気持ちを言い当てないでくださいよ…
うん?
てか、なんで、私が好き、いや好きだった、いやいや好き、ってこと知ってるの?