もう、きっと君と恋は始まっていた



『………で、でもさ!!』




私は由樹君の言葉をスルーして、話題を切り替える。




『何?』


由樹君はまたクスって笑って、そう聞き返す。






『由樹君は…これでいいの?』



私の言葉に由樹君が首を傾げる。


うん、確かに主語はあったけど、重要な言葉が抜けてるもんね。





『…だから、その、由樹君って…奈々のことが好き、なんだよね?
 その…二人は付き合ってるわけだし…。
 なのに、奈々のあんな提案…いいの?……てか、平気なの?』




そうそう。


私が昨日から疑問だったのは、今まさしく由樹君に問いかけた、この疑問。




だって、奈々が突然あんなことを言い出しても一言も話さなかった。



普通、付き合ってる人、いや彼氏彼女だったら、相手があんな提案をしてきたら、普通、怒ったりするよね…?




でも、由樹君はなんにも言わないで、ただ奈々の提案を聞いてるだけだった。






『平気って?』



結構私の中ではしっかりと話したつもりだったんだけど。

由樹君には伝わっていなかったようで、再び由樹君は首を傾げた。






『だから…その…自分以外の男の子に付き合お、とか…
 他の男の子といても、その…嫉妬したりとかないの…?』





『あぁ…そういうこと。
 俺はそれでもいいと思ったから、知佳とこんな風に登校してるんだけど?』



何事もなかったように、由樹君はそう答えた。



“彼氏彼女”ってこんなもの、なのかな…




は!もしかして…この二人、結構冷え切った関係だったのかな…?



だから奈々があんな提案を。


それに由樹君もあっさり受け入れたのか…






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