もう、きっと君と恋は始まっていた
あんなに仲良さそうだったんだけどな…
でも、当事者にしか分からない空気があるとか聞いたことがあるし。
そうだよ、きっと、この二人…
うん、それなら納得いくもんね。
『知佳さ、今、変なこと考えてない?
例えば、俺と奈々が上手くいってないとか』
由樹君の言葉に体全体がフリーズする。
だって、だって、今さっきまで考えてたことを見事言い当ててるんだもん!
え、由樹君って…エスパーとかなの?
『あ…えっと…』
『その反応は、そう考えてた、って事でしょ?』
意地悪な顔をして、由樹君がそう言うから、私は素直に“うん”と返事をしてしまった。
『ひっどいなー、知佳ちゃんは。』
“知佳ちゃん”!?
久々に由樹君から、“知佳ちゃん”って聞いたよ…。
『……ごめんなさい…。
で、でも…そう考えると、こんなおかしなことを奈々が提案するのも分からなくもないし……それに、こんなことを由樹君が受け入れるのも理解出来るっていうか……』
私の言葉に由樹君は口角を上げて、笑った。
『知佳さ?
男と女はいつだって最高の相手を選びたいわけ。
彼氏彼女って、付き合ってる、その時だけの“最高の相手”でしょ?
けど、そう思った瞬間に疑心暗鬼になるわけよ、本当にこの人が“最高の相手”かどうか、だから奈々がこんな提案をしたのも分からなくもないんだよね、俺』
由樹君の言葉は理解できるような、できないような…
でも、そんな私を見て、由樹君はクスクスと笑ってる。
『それに、奈々は崇人のこと、好きだったからね。
だから余計に見極めたいんじゃないの?
やっぱり崇人の方が“最高の相手”かどうかをさ』
………へ……?
由樹君の言葉に、私の言葉が詰まる。
奈々が崇人のことを好き、だった……?