もう、きっと君と恋は始まっていた
いやいや!
私、そんな話、奈々の口から聞いた事ないよ?
ずっと奈々と一緒にいたけど、そんなこと相談もされてないし、それに奈々から聞いた、異性の名前は、あなた、由樹君の名前だけ…
『……奈々が……崇人を?』
え…じゃ、何?
二人は本当は両想いだった、ってこと?
『混乱してる?』
さすが、エスパー!
そうそう、由樹君から聞かされた事実が、私の頭の中を右往左往していて、なんだか落ち着かない。
『……私、奈々からそんな話、一度も』
『おっはよー♪』
私は由樹君に問いかけようとしたところで、タイミング良く奈々、そして腕を組んでる崇人の姿が目に映る。
なんて朝からルンルンな奈々だろう…
さっきまで、私もルンルンだったけど。
でも由樹君が言っていた、奈々が崇人のことを好きだったという、あの言葉が頭から離れない。
『知佳?』
最初に私の顔に気づいたのは、崇人だった。
昨日も聞いた、崇人の声なのに、その声は別人のような気がしてしまう。
『おい、知佳!』
崇人の空いてる方の手が伸びてきて、私の腕を掴んだところで、ハッと我に帰る。
『何、ボーッとしてんだよ?』
崇人の言葉に、私は崇人の顔を見つめる。
『……あ……う、ううん、なんでもない…』
そう、答えてはみるけど。
なんだか胸の奥の方がざわめいている気がする。
ねぇ、崇人、嬉しいお知らせだよ…?
奈々もあんたのこと、好き、だったんだって……
そっと、心の中で崇人に投げかける。
もちろん、言葉にして伝えてないから、崇人はなんのことか知らないだろうけど。