もう、きっと君と恋は始まっていた






『知佳、この話の続きはまた今度な?』


由樹君はそう言って、微笑んだ。


でも、私はそこで笑って返せなかった。








『バーカ、前見て歩けよ?』


そんな私にお構いなしに、崇人はそう言う。



ふと崇人の方を見つめると、そこにはにこやかな顔をして奈々が崇人の腕に自分の腕を絡ませている。


それは本当に幸せそうで。






そうだよね…。


今は奈々と崇人が付き合ってる。


だから、腕を組んで歩くことも当たり前だよね…?




そうそう…。


ただ、私たちが付き合ってる時は、崇人はいつも、私の一歩前を歩いていた。


私が遅くなりそうな時は手を差し伸べて、てを繋いでくれて歩いたこともあったけど。




今、目にしているようなこと、私たちにはなかった。






『崇人、幸せだね』


私がそういうと、崇人は、“え?って言いながら、首を傾げる。





『もー、とぼけないでよね?』


意味深に私がそう言うと、奈々は崇人の顔を覗き込む。




『まぁ……良かったじゃん』


私がそう言うと、崇人は、“まぁな”と勝ち誇った顔を見せながら答えてきた。




完全に調子乗ってやがる、あの男!!






崇人と奈々は相変わらず腕を組んで歩き、何故だか私達と一緒に登校した。










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