もう、きっと君と恋は始まっていた



そう。


由樹君が言うように、自分の気持ち、自分の気持ちなんだけど。





『崇人のこと好きか、そう聞かれたら好き。
 でも、崇人のこと嫌いか、そう言われたら嫌い。
 崇人のいいところも知ってる、でも苦手…』






“一緒にならねー?”

そう言ったアイツは、急に“やっぱ友達に戻ろ”って言う。


苦しい時に手を差し伸べてくれたアイツは、楽しくなってきたと思えた時に手を突き放す。



何を考えてるのか、全く分からない。






『ふーん』


珍しく由樹君からの返事はそれだけ。




と、思ったら。



『じゃ、俺は?』


人差し指で自分の顔を指差し、そう問いかけてくる。




『由樹君は……』



好き。


好きかって言われたら好きって自信持って答えられる。

嫌いかって言われたら、全力で首を横に振って否定する。



けど。




それは…





『あれ、知佳?』


聞きなれた声に振り向くと、そこには笑顔が溢れた奈々、そして崇人が立っていた。






『あ、知佳と由樹も、今日デートなんだぁ♪』



知佳と由樹も…


奈々の“も”っていう言葉が何故だか胸を痛めた。




『二人は何見るの?』


私の気持ちなんか何も知らない奈々は満面の笑みで問いかけてくる。




でも、心が苦しくて。


なんだか声が出ない。





『知佳?』


こういう時、いつも気付くのは、崇人だ。




『…あ………えっと…私たちは…』


やっと、崇人に呼ばれ、声が出たけれども。


そこで詰まってしまう。



だって、目の前で奈々が崇人の腕に自分の腕を絡めたから。






『知佳、ちょっと』


そう言って、崇人は奈々の腕を離して、私の手を引いた。





『…え………』



どんどん奈々と由樹君から離れていく。


崇人の背中を見つめながら、私は崇人の背中に問いかける。





ね、なんで、いつも私の変化に一番に気がついてくれるの?


















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