もう、きっと君と恋は始まっていた
『崇人は、楽しい?』
私は、崇人に問いかける。
何を聞きたいでも、何かを確認したいのでもなく。
ただ、出てきた問いかけ。
『………………』
でも、崇人は黙っていた。
『楽しいよね、だって…
ずっと好きだった奈々と一緒にいられるんだもんね…?』
崇人は顔を上げて、空を見つめた。
おい、私の問いかけへの返事はどうした?
心の中で問いかけるも、崇人は空を見つめたままの状態で、
『知佳は?』
そう、質問返しをしてきた。
楽しい…
由樹君は優しくて、意地悪なことを言うこともあるけど、優しく受け止めてくれる。
だから、楽しい、んだよ…
『当たり前じゃん!』
私は笑って、そう答えた。
私の答えに、あの時のように、崇人の瞳が揺れた気がした。
『そっか、だよな』
崇人はそう言って、一人ベンチから立ち上がった。
『行こ、奈々も由樹も待たせてるから』
崇人は振り向きもしないで、そのまま映画館へと歩いていく。
『ねぇ!』
私は思いっきり、崇人の背中にそう叫んだ。
私の声に崇人はユックリと振り返る。
お互いの視線が合って、私はその口を開いた。
『なんで、いつも気づくの?』
崇人はすっごい真面目な顔に変わって、そしてその口を開く。
『俺らさ、いつもそうやってきたじゃん?
知佳が由樹のことで苦しい思いをしたり、泣きたい時はいつも一緒にいたじゃん?
だからかな、きっと、そういうのクセになってるんだろうな』
でも、言い終わる頃の崇人の顔は、困ったように笑っていて。
私は俯いた。