もう、きっと君と恋は始まっていた




何を聞きたかったんだろう。


なんて答えて欲しかったんだろう。



なんで、あんなこと、聞いちゃったんだろう…





『知佳、ほら帰るぞ?
 知佳のチャンスは、二週間の期限付きなんだからな』


崇人は、そう叫ぶ。





そう、この変な関係は二週間という期限付きのもの。


この二週間の間に、奈々と崇人が本気になれば、奈々は由樹君ときっちり別れて崇人と付き合う。


由樹君と私も本気になれば、由樹君は奈々と別れる。

恨みっこなし、妬みもなし。


そういう条件付き。





『……崇人も、頑張らなきゃ、だよね…』


私の言葉に、崇人は“そうだな”、そう言って微笑んだ。




そうだよね…


私だってせっかくのチャンスなんだよ…



ずっと好きだった由樹君と、本当の彼氏彼女になれる、そういうチャンスが巡ってきたんだ。





だから、


だから。




『お互い、頑張ろうな』


崇人の言葉通り、頑張らなきゃいけないんだよ…。






崇人は一度も振り返ることもなく、映画館の中に入っていった。


私も崇人の数歩後ろを歩きながら、映画館の中に入っていく。





『崇人ー!』


崇人を見つけるなり、奈々が可愛らしく崇人に近寄ってくる。


その後ろからユックリと由樹君も歩いてくる。




『崇人、この映画にしよ?
 もうチケット買ってあるから』


奈々はそう言って、崇人の腕に自分の腕を絡めた。







『平気?』


由樹君は私の顔を覗き込み、そう問いかけてくる。




『由樹、あんまドキドキさせないでやって?
 なんかめちゃめちゃ緊張してるみたいだから』


何も答えられない私に代わって、崇人が由樹君にそう言った。



ドキドキ…?



私は崇人の顔に視線を向けた。






< 26 / 110 >

この作品をシェア

pagetop