もう、きっと君と恋は始まっていた
The second chapter
*3day 近づいていく距離
由樹君との初デート。
…だったにも関わらず、映画の内容なんてちっとも覚えてない。
こんなの崇人と付き合う前の私だったら全くもって考えられない。
いや、好きすぎて、だから緊張して内容が頭に入らなかった、ということもあるかもしれない。
けど、昨日は全く違う理由。
『やっぱさ、明日、みんな揃うから、その時にね』
由樹君が“何も知らないのは知佳だけ”、あの言葉の意味が知りたくて、教えてもらうはず、だったんだけど。
結局、今日、みんなで集まるからその時にでも、って言われて。
結局、何も聞けないまま終わってしまった。
それが理由で、映画は全然頭に入らないし、今日は四人で会うとか…本当に気が進まない。
崇人は奈々とはどうなんだろう…?
大好きだった奈々と一緒にいて、崇人は今、どんな気持ちで過ごしてるんだろう…?
奈々も崇人を好きだった、そう由樹君は言ってた。
崇人もずっと奈々を想ってた。
こんな変なことになってるけど、きっと二人は今…
『おはよ、知佳』
待ち合わせの場所に時間ぴったりで到着したのは、由樹君だった。
『…おはよ』
なんとなく気まずくて、私は俯きながら、そう挨拶をする。
『知佳、行こ』
『え…でも、まだ奈々たちが…』
『奈々と崇人とは現地集合にしたんだ。
また昨日みたく、せっかく二人で過ごせる時間なのに心あらずじゃ困るからね』
由樹君はそう言って、微笑んだ。
『……あの…昨日はごめんなさい…』
私が謝ると、由樹君は私の頭をポンポンしてきた。
『うん…でも、俺が悪かったから。
知佳はだいぶ気にしてるみたいだったけど、俺が明日ね、とか言っちゃったから、余計に考えさせちゃったと思うし、ごめんな、知佳』
由樹君は優しい。
本当は私がいけないのに、それでも私の責任にしたりしない。
こうやって、優しく、私を包んでくれる。
私が、好きになったところ。
由樹君は、私が本当に好きだった頃と、本当に何も変わってない。