もう、きっと君と恋は始まっていた
『……みんな、なんで私には…』
『崇人が、言うなって言ったから』
…え…?
崇人が、こんな重大なことを私に言わないようにしてたの?
私だって、私だって、三人の友達だよ?
一言くらい、相談してくれても…
『知佳は由樹のことが好きだからって。
正直、俺もその時には奈々に心揺れてたし、そんな中で三人の間に微妙な空気があって、それに知佳が気づいたら、知佳に変な期待を持たせてしまうかもしれないって』
由樹君の言葉に、私はその場に止まった。
由樹君も足を止めて、そして私がいる方へと振り向いた。
『奈々もヤケクソだったと思う、崇人に想いが伝わらなくて…どうにでもなれっていう感じだったと思う。
段々、奈々の気持ちが俺に寄ってきた、それがヤケクソからだとしても、俺たちの仲が一気に縮まってく様子を見てるだけの知佳に、本当はこんなことがあった、そんなことを言えば、純粋な知佳は、純粋な想いでぶつかれば俺が振り向いてくれるかも、みたいに思っちゃうかもしれないって…』
なんだそれ…
なんだそれ…
『……何それ……』
自分でそう言いながら、沸々と怒りが込み上げてくる。
だって、確かに、あの時私は由樹君のことが好きだったよ?
由樹君と奈々の距離が一気に縮まっていくのを見て苦しかったよ?
でも、
でも。
私だって、奈々に相談されたかったよ…
崇人、そして由樹君が悩んでる時に、せめて話を聞くだけでもしたかったよ。
だって、私たち、いつも四人でいたのに。
『ここからは俺の推測。
多分、崇人は知佳が変に期待するとか、そういうんじゃなかったんだと思う』
由樹君は少し困ったように微笑んで、そう言った。
その困ったように微笑む、その姿を見て、私は由樹君の目を見つめた。
『本当は、崇人は知佳のことが好きだったんじゃないかなって、思ったりする』