もう、きっと君と恋は始まっていた
一瞬、由樹君の言葉の意味に体がフリーズする。
だって、そんなことがあるはずがない…
『…何、言って……』
でも、ちょうどその時だった。
立ち止まりながらも、なんとか足を進めていた私たちは、奈々と崇人、二人と待ち合わせてる公園のすぐ傍までやってきていた。
そして、そこには奈々と崇人の仲睦まじい姿が視界に入る。
『俺に気を遣ったんじゃない。
奈々の気持ちに気付かなかった訳じゃない。
ただ、知佳が俺を諦めれば、アイツはそれで良かったんじゃないかな…』
すぐ隣、ちょっと上の方から、私の耳に聞こえてくる言葉。
『…と、俺は、いや奈々もそう思ってるんだ、あの時のことを』
私は何も答えられなかった。
だって、目の前には奈々と腕を組んで、楽しそうに笑ってる崇人がいる。
もし、私のことを、あの時好きだったんなら。
崇人は私と別れたりしないはず。
由樹君の推測と崇人の行動が伴ってない。
『あ、知佳ー♪』
私たちに気付いて、奈々が大きく手をブンブンと振る。
そして、奈々にちょっと遅れた形で、崇人もこちらに視線を向けてくる。
崇人と視線が重なった気がする。
『もー、遅いよ、二人共ー!!』
奈々がブツブツ文句を言うと、由樹君はさすがと思える程に言い訳をして、奈々のご機嫌を取った。
『ま、四人揃ったし、お花見に行こー♪』
奈々はいつものように元気にそう言った。
でも、今日は崇人と腕を組まなかった。