もう、きっと君と恋は始まっていた




一通り、満開の桜を見て回る私たち。


きっと、誰がどう見ても、二組のカップルがお花見をしてるようにしか見えないだろう。




先を歩く、奈々が突然振り向く。


『ね、今からローボート、乗りに行かない?』


そう明るい声で、みんなに提案してきた。



私は由樹君と顔を合わせ、奈々は隣にいる崇人を見つめる。


だから、てっきり、この組み合わせで乗るのかと思ったのに。




『たまには、組み合わせを変えるのも新鮮でいいでしょ?』


奈々の提案で、奈々と由樹君、私と崇人で乗ることになってしまった。


ボート乗り場まで行くと、由樹君は先にボートに乗り込み、後から来る奈々の手を引いた。


そのあまりにも当然、といった空気に、私は胸を痛める。


付き合いが長いから当然、でもやっぱりこの二人を割って入っていく、そんなこと出来ない、そう言われてるような気がしてたまらなかった。





『乗るぞ』


崇人はそう言って、一人先にボートに乗り込む。

私は係の人に支えられて、ボートに乗り込んだ。



崇人と由樹君の、この違いは一体なんなんだろう…



やっぱり、由樹君の推測はハズレだ。






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