もう、きっと君と恋は始まっていた



『崇人…?』




崇人は私の手を自分の膝からどかす。


そして、悲しいのか、呆れてるのか、どっちとも言えない顔で、口を開いた。






『知佳、お前って残酷だよな』


崇人の言葉に、私は眉をひそめる。


今まで生きてきた中で、人から“残酷”だなんて言われたことは一度もなかった。


それなのに、人生初の言葉を崇人はなんとも言えない表情を見せながら、そんな言葉を私に浴びせる。





『……残酷…?』


私は崇人が発した、その単語の意味を知りたくて、崇人に聞き返す。





『知佳、お前が好きなのは由樹だろ?
 だから俺たち、別れたんだ…。
 お前は由樹と一緒にいられて幸せだって言えよ、笑えよ。
 中途半端なこと、すんじゃねぇーよ』





分からない。


分からない。


だって、崇人が別れを切り出したのは。

私たちは友達の関係の方がいいと思ったから、じゃなかったの…?


崇人が奈々を忘れらなれなくて、私といるのが辛くなったからじゃないの?






『もう、着く。
 そしたらお前は由樹のところに行け』


気がつくと、あと僅かで降りる場所に着いてしまう。





『崇人は……奈々のところに行くの?』



崇人からの返事なんて見当つくのに、それでも、どうして私の口はいつも崇人に聞いてしまうんだろう…。


どうして、問いかけてしまうんだろう…。






『お前は由樹だけ見てろ。
 俺は知佳が由樹と上手くいくのを願ってるから』



それは。

崇人の言葉は想像していない返事だった。



だから、意表をつかれただけだ。


こんなに心が痛いのは、思って返事じゃなかったから、だから、痛いんだ…















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