もう、きっと君と恋は始まっていた
本当はさ?
“ありがとう”とか言った方がいいんだよね?
だって、あんなに辛かった恋から助けてくれたのは、君、だったから。
助けてくれて、ありがとう。
手を差し伸べてくれて、ありがとう。
泣き言や愚痴も聞いてくれて、ありがとう。
だから。
“今度は本物の恋をして、幸せになってね”
そう、言わなきゃダメだったのに。
それなのに。
崇人に背を向けて走り出した途端、ダムが決壊したかのように、たくさんの涙が溢れ出す。
あれ…
なんで、こんなにも胸が痛いんだろう…
なんで、こんなに崇人のことで涙がでるんだろう…
それだけ、私は崇人に寄りかかってたのかな?
だから、こんなに涙が止まらないでいるのかな…?
『バーカ…バーカ………バカ野郎………バカ崇人』
立ち止まったその場で、私は心のモヤモヤを振り払うため、何度も崇人に怒りをぶつけた。