もう、きっと君と恋は始まっていた
『あ…あれは……目にゴミが入って痛くて…』
笑って誤魔化そうとした。
でも、崇人は誤魔化されてくれなかった。
『知佳、俺が気付いてないと思ったの?』
『…え?』
『知佳、泣きたいのを我慢するとき、前髪を触るクセがあるから』
崇人に言われて、昨日のことを思い出す。
確かに崇人の言葉たちに泣きたくなって……でも風が吹いてたから、髪の毛を押さえるのに、そういう目的もあったんだけど。
『由樹のことで泣きたいとき、お前、いつもそうしてたよ?』
……やっぱり。
崇人の方が敏感かもしれない。
きっと私の泣き顔を一番傍で見てたから。
いつも見守ってくれてたから。
『…………………そんなことないよ』
それでも、尚、私は崇人にそう伝える。
崇人は深い溜息をついた。
『……崇人はそんなこと聞くために来たの?
そんな時間があるなら奈々と愛を語ればいいじゃん?
期限は二週間、崇人、今からアピールしないと……』
私の言葉を最後まで聞かないうちに、崇人の両手が伸びてくる。
そしてその両手で、私の頬に振れる。
『…え?』
その行動が意味してるものが分からなくて、私は言葉にならないものを発した。
『由樹を好きだって、言えよ』