もう、きっと君と恋は始まっていた
今度は崇人の言葉の意味が分からなかった。
『由樹を好きだって言え、中途半端なことすんなよ』
崇人の両手に力が入る、それに比例して私の唇が尖ってゆく。
『……なんで…そんなこと、崇人に言わなきゃいけないの…?』
でも、崇人の瞳が揺れた。
『お前が……知佳が由樹とどうにかなってくれねーと、奈々が…由樹のところに戻るだろ…?』
このためらいを感じる、この言葉は、この言葉にどういった真意があるのかは分からない。
どうして、そんなに苦しそうな顔を見せるのかさえ分からない。
『崇人は……私と由樹君に付き合ってもらいたいの?』
きっと、崇人は“うん”と答えるだろう。
そんなこと聞かなくても分かるくせに、それでも終わらせたかった。
『崇人は……私が、由樹君と付き合っても…いいんだ…?』
きっと、崇人は“いいんじゃね”と答えるだろう。
そうしたら、私は由樹君だけを見ることにしよう。
そうしたら、このモヤモヤとしたもの全てを捨てて、由樹君の胸に飛び込もう。
そうすれば、崇人は奈々のもとに行ける。
奈々は由樹のもとに帰らなくて済む。
二人は、きっと、幸せになれる。
『いいから………好きって言えよ…』
私がそう言わないと、崇人は答えてくれないんだね…。
『好きよ……由樹君のことが大好きよ……』
言って、そこで、私の本当の好きは、崇人に向いてることに気付いた。