もう、きっと君と恋は始まっていた
*5day 由樹の元に
『おはよ、知佳』
次の日、私が学校に着くなり、由樹君がそう声をかけてくれた。
『おはよ、由樹君』
努めて明るい声を出し、由樹君に挨拶を返す。
由樹君はじーっとこちらを見つめ、まるで私の心を見透かそうとしている。
『何、どうしたの?』
私の問いかけに、由樹君がクスって笑った。
『昨日、崇人が家に来たでしょ?』
由樹君の言葉に、私は意表を突かれた。
『…え……』
『昨日、崇人、早退したんだ。
どこも悪いようには見えなかったし、それに知佳も休んでたから』
私は、由樹君の鋭さにドキッとした。
でも由樹君は鋭い目でもって、私の顔を見つめる。
『何、話したの?』
そんなことを聞かれても、どう答えればいいのか…
『知佳、今の知佳の彼氏は俺でしょ?
小さい男って思われるかもしれないけど、知佳が他の男と二人きりで会うっていうのはいい気はしないな、例えそれが崇人だとしても、いや、崇人だからこそ…かな』
崇人だからこそ…?
『確かに崇人は来て二人きりだったよ…?
でも、崇人は他愛もない話をしただけだから…』
そう。
崇人の心は、やっぱり奈々に向いてる、それを突きつけられただけ。
私が、私の本当の想いに気づいちゃっただけ。
『知佳、本当に他愛もない話だったの?』
由樹君はそう言って、私の顔を覗き込む。
『…そうだよ』
『嘘つき』
由樹君はそう言って、私のおでこにデコピンを喰らわす。
由樹君にデコピンされたところは次第に痛みが広がり、私はおでこに触れた。
『崇人に、好き、とか言われたの?』