もう、きっと君と恋は始まっていた
『じゃ、なんであの時、泣いた?』
由樹君からの問いかけがついにやってきてしまった。
これが嫌だったから話そうと、でもこれ以上、由樹君に話せるものがなかった。
だって、崇人の想いも奈々にしかない、二週間後も奈々といたい、それだけだった。
それだけしかない崇人の会話をこれ以上広げられない。
『なんでボート降りたとき、泣いた?』
でも、由樹君は私が答えなければ答えないほど。
私が黙れば黙るほど、口を開けなければ開かないほど、そう問いかけてくる。
『あれは……由樹君と一緒にいられる、そう思ったからだよ…?』
『知佳?』
『だって奈々に悪いけど……私だって由樹君のこと、好きだったんだよ?
奈々と付き合って……苦しかったし、悔しかったし、悲しかったけど…
由樹君と奈々が本当に幸せそうだったから、乗り越えられたんだもん…
それが今となって、私にとって最大のチャンスだよ?
崇人には頑張って、奈々のことを振り向かせてもらわないと…私の恋だって成就できない…………』
由樹君は顔色一つ変えなかった。
でも、低い声で、問いかけてくる。
『知佳、いつから、そんなに嘘つきになったの?』
…え…?
由樹君の言葉に、私は由樹君の顔を見上げた。
『俺がそうさせたの?
それとも崇人がそうさせたの?』