もう、きっと君と恋は始まっていた
『……何……言ってるの……?』
私は、由樹君の言葉に戸惑いを隠せない。
『俺が奈々と付き合ったから?
自分の気持ちを奈々と俺のために押し殺してたから?
だからそんなに自分の気持ちに嘘をつくのが上手になったの?
それとも…崇人が奈々のことを好きだから?
崇人が奈々と幸せになれるように、そう思って身を引くために、相手に嘘をつこうとしてるの?』
この人の……由樹君のこの勘の鋭さは一体なんなんだろう…。
私はまだ、由樹君に自分の心さえ言ってないのに、どうして由樹君はそんなことを言えるんだろう…
『答えて、知佳』
答えはきっと、両方合っての正解だと思う。
最初は由樹君のことが好きだったから、由樹君には幸せになってもらいたくて、だから由樹君と奈々の前で気持ちを隠して、“友達”を演じてきた。
だから、きっと、嘘が上手になった。
でも、今は…
崇人の想いを大事にしたい、奈々に届けさせてあげたい…
その気持ちが大きい。
『………ごめんなさい……』
勘の鋭い由樹君は、私のそのたった一言の言葉で全部を悟ってくれたのかもしれない。
『バカだね、知佳は…。
嘘が上手な女の子なんて可愛くないよ?』
由樹君のその言葉で、由樹君には私の心の内を全て理解されたのだと思った。
『………うん…………ごめん……』
相変わらず優しい由樹君は、私の頭をいつも以上に優しくポンポンとしてくれた。