もう、きっと君と恋は始まっていた
The first chapter

*0day 奈々の提案





『あたし、ストレートティーで』


親友の奈々が透き通った声で店員に注文した。





『ほら、知佳は?』


奈々は店員から視線を変えて、私の腕を小突きながら問いかけてくる。






『…へ…あ……えっと』


私はそう言いながら、目の前にあったドリンクのメニューに目をやる。


ソフトドリンクだけでも充実した品揃えのある、このカフェでなかなか決められない私はメニューと睨み合い。



アセロラ、グレープフルーツ、それからそれから…







『アセロラで』


まだどれにするか決まってない私に代わって崇人が勝手に注文をする。




『……え、ちょ……』



“ちょっとなんで勝手に”、出来れば私だって言いたかった。


けど、崇人はそれを封じさせるかのように、私を軽く睨んでいる。



そういう顔をされると、言いたいこと、言えなくなるじゃんかー!


崇人に言えない言葉を胸の内で叫ぶことにした私。






『知佳はさ、悩みすぎ』


そんな私にお構いなしに崇人はしれっと、そう言った。




くっそー!!


こいつー!!



でも、崇人の方が口が達者。


だから、崇人と言い合いをしようとか、そんなことを考える方がバカバカしい。



どうせ負けるって勝負に全力を出したって、労力、そして時間の無駄だし。





って。

崇人への対応には悩まないのにな…







『アセロラ、嫌いじゃないだろ?』



思わず、崇人の言葉に、“う”っと言ってしまう。

崇人は見逃さず、聞き逃さず、その場でクスッと笑った。





ムカつく。

ムカつく。



やっぱ、こんな奴、別れて正解だった!




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