もう、きっと君と恋は始まっていた
『知佳、辛かったね。
一人で背負うのは辛くない?
知佳、全部、お前の心の中のもの俺に吐き出せよ、な?』
優しい由樹君。
きっと、私の心の中だなんて、私が言わなくても分かってるくせに。
それでも、由樹君はそう、言ってくれるんだから。
でも、話そうと思った瞬間に、ホームルームが始まるチャイムが鳴り響き、由樹君はクスッと笑った。
『俺もまだ神様から見捨てられてないのかもな』
由樹君の言葉に、私は首を傾げた。
『俺の予想だと、今チャイムが鳴らなかったら、俺、知佳に“ごめん”って振られちゃうでしょ?
だから、その時間が長引いたてこと』
そう言って、困った顔で微笑むも、私はその言葉に何も言い返せなかった。
そんな私を見て、由樹君は真顔に変わる。
『知佳、明日の放課後、ユックリ話そか?』
由樹君の言葉に、私は静かに首を縦に振った。
教室に移動すると、昨日の席替えで私の隣は神様の意地悪なのか崇人が座っていた。
その斜め前、つまり私の前には奈々がいて、二人共、仲良く話をしていた。
『平気?』
由樹君に問いかけられ、私は笑みで返した。
『俺の前では正直な知佳でいろよ。
俺の前で、もう二度と嘘つくな』
由樹君は、そう言って、私の頭を軽く小突いた。
きっと、崇人への想いなんかに気づかなければ。
私は、この人の元にいて、この人への想いを深めていっただろう…
そしたら、きっと。
由樹君も私も、二週間後は笑顔だったのに…。