もう、きっと君と恋は始まっていた





『じゃ………なんで……奈々を好きだって……嘘、ついたの…?』




もし、もしも…


崇人が正直に気持ちを言ってくれたのなら。


そうしたら私は…




『知佳が俺を好きになったから、でしょ?』


由樹君の言葉に、私の目から温かいものが流れ落ちてくる。

その温かいものは頬を伝わって、そして制服のスカートに落ちていく。





『だから奈々も俺のところにきた、お互い傷を舐め合ってただけだよ。
 俺もその頃は知佳のことが好き、その気持ちと同じくらいに奈々を支えてやりたいって気持ちがあったから、だから奈々と付き合った』





……何も知らなかった。


あの時、みんながどんな気持ちで、誰かを想っていたのか。

あの時、みんながどんな気持ちで、笑い合って過ごしていたのか。






『最初から、俺たちに両想いなんてあり得なかったんだよ。
 俺は奈々、奈々は崇人、崇人は知佳、知佳は俺…だから誰も幸せになれる奴なんていなかったんだよ』





『奈々は崇人の想いを、崇人が知佳を想う気持ちを応援したくて封印した。
 だから、今、こういう機会を作るために提案したんだと思う』





由樹君の言葉に、

私はこの四人の想いに涙を流した。






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