もう、きっと君と恋は始まっていた
The third chapter
*7day 奈々の想い
次の日。
学校に行くと、既に登校している由樹君と奈々が楽しそうに笑い合っているのが目に入った。
その姿を見ていると、本当に二人が付き合っていた頃を思い出す。
あの頃も、あんな風に二人きりの世界で笑ってた…
由樹君も奈々も、付き合っていた日々は、由樹君がいうだけの関係だったのかな…?
一緒にいるうちに、笑い合ってるうちに、お互いに恋に発展することはなかったのかな…?
本当に、本当に、ただの傷の舐め合いをしてただけの関係…?
『あ、知佳おはよー』
教室の入口につったている私に気付いた奈々が手をブンブン振って、こちらに歩み寄ってきた。
『…奈々、おはよ』
私がそう声をかけると、奈々は私の手を取って、
『知佳、今日の放課後、空いてる?』
その可愛らしい声で、可愛らしい顔で問いかけてきた。
『暇だよ』
そう答えると、奈々は私の手を掴んだままブンブンさせ、“じゃ、放課後付き合って”と言ってきた。
『………うん…』
なんとなく曖昧な返事になってしまった。
と、いうよりも、その奈々の可愛らしい顔に、可愛らしい声に、胸が痛くなってしまったからだ。
だから、こんな曖昧な…
何も知らない奈々は“どこで話そっか”とか“あ、あそこのカフェにする?”とか、そんなことで笑っていた。
奈々、ごめんね…
私は心の中で、奈々に謝罪した。