もう、きっと君と恋は始まっていた
『…奈々たちは?』
わざと由樹君とのことは伏せた。
『あ、反らしたなー!
まぁ、うん…私たちは順調だよ』
奈々は頬を赤らめて、そう言った。
『あ、知佳、あたしのこと引いてるよね…
由樹という彼氏がいるのにこんなこと提案しちゃって…』
その言葉を言い終わると同時に、奈々の顔から笑みが消えていく。
確かに、確かに最初はそう思ってた。
あんなにも幸せな奈々がなんでこんなことを提案したのか…
でも、由樹君から聞いた事実が、奈々の提案してしまった件についてはなんとなく理解は示しているものがある。
『…そんなことないよ…?』
私の言葉に、奈々は少し安心したのか、安堵の笑みを見せる。
『知佳、あたしね?
崇人のことが好きだったんだ…。
出逢った頃から、由樹と付き合ってるその時まで…。
本当に最低…最低な女だよね……』
あらかじめ由樹君から奈々の気持ちのことは聞かされてたけど。
本人を目の前にして、本人の口から言われると結構胸にズキズキとくるもんだ…。
『……どうして由樹君と付き合ったの?』
私の問いかけに、奈々はハッとした表情に変わる。
『…言ったら、きっと、知佳はあたしと
友達でいられなくなるよ…』
『奈々、私たちは友達でしょ?
言いにくいことなのかもしれないけど、ちゃんと話してよ?』
その言葉に奈々は一度深い溜息をついた。