もう、きっと君と恋は始まっていた
いつもより早い時間。
いつもより、きっと早く駅に着くだろう。
でも、私は歩きたかった、どこでもいい、一人で歩きたかった。
いつもの通学路をたまに寄り道をしてみたり、知らない道を通ってみたりもした。
そんなことをしていたら、なんだかんだでいつもの時間と同じになってしまった。
私はいつもの電車に乗り、揺られながら、ただ窓から見える景色を眺めていた。
高校の最寄りに着くと、そこにはもう由樹君が立っていた。
『…由樹君!』
私が由樹君の名前を呼ぶと、由樹君は私の方に視線を向けてきた。
『ご、ごめんね…なんかお待たせしちゃった…かな…』
『俺も今来たところだよ』
由樹君はそう言って、優しく微笑んだ。
『あ……どうしたの?』
私は何故、ここに呼び出されたのか、由樹君に問いかけてみる。
『うーん、昨日奈々と話したんだろう?
奈々の想いとか…諸々聞いて一人で悩んでるんじゃないか、と、思って。
もしそうなら、今、知佳の話を聞いてやれるのは俺だけだからさ』
由樹君は本当になんでもお見通し、だな…。
私は由樹君になんでもバレてることに、苦笑してしまった。
『笑ってる場合か?
俺的予想だと、奈々が告るとか、そんな類の話をもらってるんじゃないかって、そう、思うんだけど?』
またもや、由樹君にはバレバレ…
『…うん、その通り…』
私が認めて、そう言うと、由樹君は“やっぱり”と呟いた。