もう、きっと君と恋は始まっていた










『それに…崇人の心には、昔も今も、奈々しかいないの…。
 だから、崇人がそれを望むなら、私は言わない…言えない』




たくさん悩んで。


たくさん泣いて。


たくさん後悔するかもしれない。


それでも、崇人の為に、そうしようと決めたんだ。







『でも、知佳は崇人と一緒にいることで、俺をしっかり忘れて、崇人を好きになったんじゃないのか?
 それを、そのことを、崇人に言わなくてもいいのか?』




由樹君の言葉は私の決心を揺るがそうとする。




『俺は、崇人が奈々と付き合っても、知佳とは慰め合ったりしないよ?
 知佳と付き合うこともないよ?』




…違う。


由樹君は私の決心を揺るがしたいんじゃない…。





『由樹君も奈々のことが好き、だから…?』




『……なんだ、それ』


由樹君は困ったように笑って、そしてその顔のまま、私を見つめてくる。





『私、崇人に慰めてもらったんじゃない。
 最初はそういう目的だったのかもしれない…でも違った。
 崇人は私に新しい恋をさせてくれたの…。
 由樹君も、そうだったんじゃない……?』





『ずっと崇人のことで泣いてる奈々を助けるつもりが、本当は奈々と過ごすうちに奈々のことを本気で好きになっちゃったんじゃないの?』




でも、由樹君は黙って、私の問いかけに耳を傾けていた。






『今でも、由樹君は奈々のこと、好きなんだよね?
 でも奈々の恋を応援したくて、奈々の提案に乗ったんじゃないの?』





『………………知佳、お前、そんな奴だったっけ?』


由樹君は、そう言って笑った。





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