もう、きっと君と恋は始まっていた
私たちは肩を並べて、そのまま教室まで歩いた。
教室に着くと、顔色の悪い奈々が私に駆け寄ってくる。
『奈々?』
もう顔色真っ青、そんな顔で、奈々は私の耳元で声を発する。
『緊張して…一睡もできなくて……。
なんだか気持ち悪くて……もうダメかも……。
でも昨日、崇人に放課後に屋上に来て欲しいって言っちゃって…。
でもでもあたし携帯忘れてきちゃって……。
こんな状態じゃ…うまく話せないし……
知佳、一生のお願い……あたしの代わりに崇人に言ってもらえないかな…?』
え……
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!!
私が奈々の代わりに?
無理。
無理。
絶対に無理。
だって…そんな奈々の代わりって……
『奈々、そういうことは自分で言ったほうがいいんじゃね』
返事に困ってる私に代わって、由樹君がそう奈々に言ってくれる。
『ダメ…。
由樹、今日が何の日か、忘れちゃった?』
奈々は真っ直ぐな目で、由樹君を見つめ、そう問いかける。
『…今日…』
由樹君がハッとした顔になる。
『…そ、今日はあたしたちの記念日。
だから、どうしても今日、ケジメをつけたい、だから…』
奈々はそこまで言い、そして唇をギュって嚙んだ。
そして、由樹君も顔を横に背け、何もない風景をただ見つめていた。
『………分かった。
でも、ちゃんといつか崇人に直接、奈々の好きを言ってあげてね?』
私が微笑み、そう言うと、奈々はパァっと顔を明るくさせ、こちらに視線を向けてきた。
由樹君は悲しそうに、そんな奈々を見つめていた。
どうして、恋はこんなにも辛いんだろう…。