もう、きっと君と恋は始まっていた
放課後。
結局、奈々は体調が悪化して早退してしまった。
私は隣の席で帰り支度をしている崇人を横目で見つめる。
それに気付いたのか、
『…なんだよ?』
崇人はそう問いかけてきた。
『うん……あのさ、今から暇?』
私はぎこちないながらも、崇人に問い返す。
『…まぁ、それで?』
『……うん、ちょっと話したいことがあるから、ちょっといい?』
私はそれだけ言って、崇人の後ろを通り、教室を出て行く。
崇人も渋々といった顔で、私の後について、廊下まで出てきてくれた。
まだ下校する生徒で溢れている中、ここで奈々の想いを伝えるのも勇気がいることで、私は再び移動をする。
気がつけば、そこは奈々が最初から崇人を呼んでいた、屋上だった。
『知佳、そろそろ移動は止めて、話したいこと話せよ』
崇人にそう言われ、私は屋上に続く扉を開け、屋上に出て行く。
崇人はまた私の後を黙ってついてくる。
屋上の周りにはフェンスで囲まれていて、私はそのフェンスのところまで歩いた。
『知佳』
崇人に呼ばれ、私はフェンスの金網に手を置いた。
そして、深呼吸をしてから、その重たい唇を動かした。