もう、きっと君と恋は始まっていた



『…あ、あの…すみません』


語尾の方は段々と小さな声になってしまったけれど、とりあえず店員に謝罪し、店員が運んできてくれたドリンクを受け取る。


店員も最後にはクスクスと笑っていたけど、それには気付かない振りをして、受け取ったドリンクをそれぞれの前に置いていく。




最後に残ったアセロラとコーラ。


コーラは崇人が頼んだんだけど、私はアセロラを崇人の前に差し出し、コーラのコップに口をつけた。




『は?』


ちょっと機嫌悪そうに崇人がコーラが注がれているコップを見つめ、そう言葉を放つ。




でも、そんなのもう遅い。


私はコーラをグビグビと飲んでいく。




『てかさ』

途中で崇人が止めに入ったけど、私は更に飲んで、苦しいと思えるとこまで飲んだ。


一気に半分も飲んだから喉は痛いし、なんか苦しい…





『何やってんの、それ、俺が頼んだんだけど』



もう怖い顔…


けど、知らないよ。


あんたが勝手に頼んで、勝手にバカにして、挙げ句の果てには私を見ず知らずの人たちにまで笑われることをしたんだから!





『崇人なんてアセロラで充分だ、ばーか!』



私がそう言うと、崇人は立ち上がって、私のすぐ傍まで来て。


私の両頬を指でぐにゅっと掴んで、そのまま引っ張ってきた。




『そういうこという口はどの口だよ?
 これかー?』


これが手加減なしでやるもんだから痛くて痛くて。



『……うゆさい…』


“うるさい”と反抗したかったのに、両頬を掴まれていて上手く話せず、出てきた言葉はそんな言葉になってしまった。





『バーカ』


それでもって、その言葉に、そしてこの両頬を引っ張られてるこの顔が面白いのか、超意地悪な笑みを見せながら、そう口にした。




こんの、悪魔!!




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