もう、きっと君と恋は始まっていた







『崇人、あのね……』


澄み渡るほどの青空の下、私は崇人に言葉を続けたいのだけれど。

口はうまく動いてくれない。


澄み渡る青空は、まるで心の中で泣いている私のように青くて、悲しく見えた。






『なんだよ、知佳?』


何も知らない、今から何を言われるのかさえ分からない崇人は私の先程からの態度にイラつきを感じているようだった。


その証拠に、崇人が発する言葉は、とても低く、冷たかったから。






『……うん、あの…………』




崇人の恋を応援しようと思った。



それなら、今、奈々の想いを伝えるべきだ。


親友の奈々から、そう、頼まれているんだから。




でも。


でも。



きっと、奈々の想いを伝えてしまったら。


そしたら、きっと、崇人は今まで私が見たこともないような笑顔を見せるんだろう…。



私に、そんな崇人を見れる自信があるのだろうか…。






『知佳、早く言えよ』



その荒げた声に、私はビックリして、そして悩んでいた、その言葉を言ってしまった。




『好きなんだって!』



……あれ……?


ほぼ叫んだと言ってもいい、その言葉。


主語が抜けていて、早く主語を付け足さなければ私の想いだと勘違いされて……







でも、目の前にいる崇人は完全にポカーンとした表情をしていた。







『は……え、お前が?』




私は見逃さなかった。


そう言った時の崇人の顔。


すんごく困っている顔に。






『……………じゃない。
 私じゃなくて、奈々が……』





やっぱり、そうだ。


私が“好き”だと伝えても、崇人はきっと、あの顔をずっと見せてくれて。


そして、“ごめん”と謝るのだろう…。



だから、急いで“奈々”の名前を出した。




その言葉に、崇人の顔は困った顔ではなく、少々ビックリしたような顔をしていた。





私から、と。

奈々から、と。


それだけで、崇人の顔は変わる。




やっぱり、崇人の好きな人は、奈々だ。










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