もう、きっと君と恋は始まっていた
『……あっそ』
でも、崇人はそう言った。
え、奈々の告白だよ?
そんな言葉で返す、普通?
てか…
『てかさ、なんでお前がそんなこというわけ?』
崇人は明らかイライラした態度で、怒ってる口調だった。
私は崇人の顔をみないようにして、口を開いた。
『奈々に頼まれたから』
私の言葉に、崇人は深い溜息をついた。
『知佳さ、知佳は誰かに頼まれたら、そういうことすんの?』
『……そういうことって……告白の代わり、のこと?』
『……そんなことされて、俺が喜ぶとでも思ってんの?』
崇人はイライラしたまま、そう問いかけてくる。
…分かってるよ。
奈々の本人から、“好き”の一言が聞きたかったっていうくらい…。
でも、
でも、私は頼まれたことをしただけだよ。
『知佳さ、俺と奈々が付き合ってもいいの?』
『……え…?』
『知佳には由樹がいるもんな。
むしろ俺と奈々が付き合ってくれた方がいいよな』
そう言って、崇人は私に背を向ける。
『……私は……』
言いたい…
私だって、崇人のことが好きなんだ、そう言いたい…
でも、由樹君との約束がある。
私から提案した約束がある。
言えない。
『ばーか、そういう顔すんなよ。
もう知佳が由樹のことを好きだってこと、すっげー分かってるからさ。
だから、そういう顔をして、お前の気持ち教えてくれなくていいから』