もう、きっと君と恋は始まっていた

*9day 崇人と由樹




次の日。


奈々はまたお休みだった。


なかなか教室に顔を見せないので、連絡を入れてみたけど、奈々からの返信はなくて、朝のホームルームで担任から、奈々が休みだと聞かされた。


ホームルームが終わり、1限が始まるまでの時間、由樹君が振り返り、声をかけてくる。




『奈々から連絡あった?』



『…ううん、連絡入れたんだけど、返事戻ってこなくて…』



由樹君も私もお互いに心配そうな顔をしていたけど、隣の席の崇人は素知らぬ顔をしていた。




『崇人は聞いてた?』


私が問いかけると、


『連絡入れてないから』


崇人はそれだけ言って、席を立ち、教室から出て行ってしまった。





『……え…なんで……』


私はもう廊下まで出て行ってしまった崇人の背中に問いかける。





『昨日…自分から奈々に返事するって言ってたのに…。
 昨日、連絡して、奈々の体調を聞かなかったのかな…』


私がそう呟くと、由樹君は一瞬考えた顔をして、そしていつもの由樹君の顔に戻る。




『知佳、今日、崇人の気持ちを聞き出してみようか』


由樹君はそれだけ言って、クスッと微笑んだ。





聞くって…


もう今更、崇人に聞くことなんてないと思うんだけどな…


奈々と付き合う、そう、言ってたし…




それって、今は奈々のことを好き、ってことは確かだもんね?






『まぁまぁ』


そう笑う由樹君を見ながら、私は首を傾げた。





< 73 / 110 >

この作品をシェア

pagetop