もう、きっと君と恋は始まっていた
*9day 崇人と由樹
次の日。
奈々はまたお休みだった。
なかなか教室に顔を見せないので、連絡を入れてみたけど、奈々からの返信はなくて、朝のホームルームで担任から、奈々が休みだと聞かされた。
ホームルームが終わり、1限が始まるまでの時間、由樹君が振り返り、声をかけてくる。
『奈々から連絡あった?』
『…ううん、連絡入れたんだけど、返事戻ってこなくて…』
由樹君も私もお互いに心配そうな顔をしていたけど、隣の席の崇人は素知らぬ顔をしていた。
『崇人は聞いてた?』
私が問いかけると、
『連絡入れてないから』
崇人はそれだけ言って、席を立ち、教室から出て行ってしまった。
『……え…なんで……』
私はもう廊下まで出て行ってしまった崇人の背中に問いかける。
『昨日…自分から奈々に返事するって言ってたのに…。
昨日、連絡して、奈々の体調を聞かなかったのかな…』
私がそう呟くと、由樹君は一瞬考えた顔をして、そしていつもの由樹君の顔に戻る。
『知佳、今日、崇人の気持ちを聞き出してみようか』
由樹君はそれだけ言って、クスッと微笑んだ。
聞くって…
もう今更、崇人に聞くことなんてないと思うんだけどな…
奈々と付き合う、そう、言ってたし…
それって、今は奈々のことを好き、ってことは確かだもんね?
『まぁまぁ』
そう笑う由樹君を見ながら、私は首を傾げた。