もう、きっと君と恋は始まっていた
The last chapter
*11day 由樹と奈々の決着
由樹君は、そのまま真っ直ぐ奈々の方へと歩いていく。
崇人は由樹君の存在に気がつき、そして由樹君のことを見つめていた。
奈々は由樹君の存在には気がついていなかったけど、由樹君が優しく奈々を呼んだ。
『奈々』
奈々はその声に驚いて、顔を上げ、由樹君を見つめた。
『……由樹……なんで……ここに……?』
スムーズに言葉にならないのは、きっと奈々が心底驚いているからだと思った。
『…ごめん。
今の会話、聞いちゃった…』
由樹君がそう言うと、奈々の顔は一気に赤くなった。
あんなに真っ赤にさせてる奈々が本当に可愛らしい。
『奈々、俺のこと、どう想ってんの?』
それは由樹君の、真っ直ぐな問いかけだった。
由樹君の言葉を聞いて、崇人はユックリと体を回転させて、そのまま私の方へと歩いてきた。
隠れようか、逃げようか…どうしようかと悩んでるとき、
『………好き』
奈々が、そう答えた。
奈々の言葉を聞いて、私はその場で足が止まった。
『ごめん……あたしが由樹にそんなこと言える資格なんてないのに…。
でも…顔を見たら…ちゃんと最後に気持ちだけ伝えたくて……ごめん……』
奈々はそう言って、その場で俯き、そして由樹君から離れようとした。
由樹君の真横を通り過ぎる時、由樹君は奈々の腕を掴んだ。
『俺に返事くらい、させろよ、奈々…』
由樹君のその声は、私が今までに聞いたことのないくらい、男らしく、そして凛々しい声だった。