もう、きっと君と恋は始まっていた





『奈々、由樹君と幸せになってね。
 それとね…私も奈々に言わなきゃいけないことがあるの…。

 実はね……私、崇人のことが好き、なんだ…』



私がそう告白をすると、奈々は怒るでも、驚くでもなく、その場で優しく微笑んだ。






『知佳が崇人のことを好きで良かった。
 崇人、ずっと知佳のことが好きで、知佳の為に自己犠牲になろうとしてたからさ?
 知佳から言ってあげてくれる?
 “もう、そんなことしなくてもいいんだよ”って』


奈々はそれだけ言うと、由樹君と顔を見合わせて、そしてもう一度優しく微笑んだ。






『奈々、俺たち、これで本当に終わりにできるな』


由樹君の言葉に首を傾げる私。



え……二人、元に戻るんじゃ……





『あ、知佳、そういう意味じゃなくて。
 あたしも由樹も、お互いを好きで付き合い始めたわけじゃなかったから、お互いに疑心暗鬼だったの、自分の気持ちにも、相手の気持ちにも。

 だから今回、由樹は元想い人でもある知佳と、あたしは元想い人でもある崇人と一緒にいて気持ちの変化があるか調べてみようって話をしてたの…

 ごめん……あたし達の実験でもあったんだ、今回のこの提案には。』





え……?




えぇーーーーーーーーーー!!?




私は目を真ん丸くして、奈々と由樹君を見つめる。






『離れなきゃ、分からないこともあるでしょ?』


由樹君はそう言って微笑んでるけど。



なーんだ。


最初から、この二人、気持ちを確認し合いたいくらいに想い合ってたんじゃないかー!!






『でも、知佳と崇人のお陰で、俺たち二人とも、一緒にいた時間をどう想ってたのか、特別な気持ちがあったのか、お互いに知ることができたよ、ありがとな、知佳』





まぁ、いっか。


二人が幸せなら、それでも。



私は一人納得をして、“いいえ”と言った。






『あとは自己犠牲で生きてる崇人と、知佳、この二人だけだね』



奈々はそう言って、“知佳、頑張れ”と付け足して言った。






うん。


今だから、そういうわけじゃない。





でも、由樹君と奈々を見ていたら、しっかり相手に気持ちを伝えることって、すごく大事なものだと思えたから。




だから、今度はちゃんと、崇人に好きって伝えたい。








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