もう、きっと君と恋は始まっていた
*12day 知佳と崇人
……どうしよう…。
教室の出入り口、の、ドアから一歩も動けずの私。
昨日、崇人に気持ちを伝えたい、そう意気込んだのだけれども、既に登校している崇人を見つけて、教室に入れないでいる私。
うぅ……
どうしよう…
こんな時、席が廊下側と窓側とで離れていれば、何事もない顔をして自分の席に行けたのかもしれないけど。
こんな時に限って、席は隣同士。
うーん……
入ればいいのは分かってるし、入らなきゃいけないんだけど。
でも……なんて声をかければいいんだろう…
『知佳?』
不意に呼ばれ、声の主の方へと振り向く私。
そこには由樹君が登校してきたのか、肩にカバンをかけている姿で立っていた。
『…あ……おはよ』
私がそうどぎまぎしながら挨拶をすると、由樹君は教室の中に視線を向けた。
『ふーん…崇人、今日は早いんだね』
おっと…。
今、その名前が出てきてしまった。
由樹君は何もない顔をして、そう言うけど。
私は心の中でパニック状態。
『知佳、とりあえず教室の中に入ろ?』
由樹君はそう言って、私より先に教室に入っていく。
私も意を決して、由樹君の後に続く。
もちろん、由樹君が私よりも背が高いから、由樹君の背中に隠れながらの入室だったけど。
『崇人ー、おはよー』
由樹君の言葉に、私はまたもやドキッとする。
『うん、はよー』
崇人の声は少し元気のなさそうな感じだった。
『どうした?』
由樹君が崇人に聞き返すも、崇人は黙ったまま。
『なんかあんなら、言えよ?』
由樹君がもう一言付け足して話すと、崇人はため息をひとつはいて。
『あんさ……。
由樹って奈々のことが好きなんだよな…?
その…知佳のことはどうすんの、お前?』
崇人の言葉に、五秒くらい経って、由樹君は背後で隠れている私の手を引っ張った。