もう、きっと君と恋は始まっていた
『………へ……?』
そう言うも遅かった。
その言葉が言い終わる頃には、崇人の視界に映る私。
『それは知佳本人に聞いた方がいいと思うけど。
ね、知佳?』
とても意味深な、“ね”の言い方に私の顔は引き攣り、崇人の顔は曇った。
『あ……えっと……あの……いやー……』
突然の事の成り行きに全然ついていけない私に、崇人の視線が痛いくらいにささる。
『じゃ、とりあえずホームルームが始まるまでの間、二人で話してくれば?』
由樹君はそう言って、私の肩からカバンを奪い、再び廊下の方へと押し出した。
え……
え………
い、今…!?
まだどういう風に気持ちを伝えようか考えてないのに?
『はい、崇人も』
由樹君はそう言って、今度は椅子に座ってる崇人の腕を掴み、ほぼ無理矢理に近い形で立たせて、私と同様に廊下の方へと押し出した。
『じゃ、いってらっしゃい♪』
由樹君がにっこりを微笑むも、私の顔は緊張で笑えもしなかった。
崇人が廊下に出てきて、私の緊張は更に強いものと変化していく。
『え、何?
俺、よく分かんないんだけど?』
崇人は意味不明です、と言わんばかりの顔で教室にいる由樹君を見つめ、そう言った。
『ん、だから、知佳に聞きな』
由樹君の言葉に、崇人の視線がこちらに向けられる。
絡み合う視線に、私はドキドキし過ぎて、崇人から視線を反らしてしまった。
…無理。
もう、無理です…。
こんな緊張してるのに、崇人に、“好き”なんて言えない…