もう、きっと君と恋は始まっていた
『知佳、顔色悪いけど…?』
崇人はそう言って、私に近づいてきて、そして覗き込んでくる。
『……べ…別に何もないです…』
そう答えてみるも、崇人は更に鋭い視線を向けてくる。
『知佳、俺になんか話でもあるの?』
崇人は視線を反らさず、そのままの鋭い視線のままで問いかけてくる。
う……
こんな視線を向けられてたら、“好き”なんて言えない…
たった一言、されど一言、“好き”の一言がこんなにも重い言葉だったなんて、初めて知ったよ…
『…ないなら、俺、戻るわ』
崇人はそう言って、踵を返して、教室に戻ろうとした。
だから。
私は咄嗟に自分の腕を伸ばして、教室に戻ろうとする崇人の手を掴んだ。
『……知佳?』
崇人は私の突然の、その行動に驚いた顔を見せる。
『あ……あのね……?
ちょっと、話したいことが…あるの。
……聞いてくれる……?』
ど…どうしよう……。
もし、“いや”とか言われたら…。
“好き”の一言を言う前に、玉砕してしまったら、どうしよう…。
『…うん、いいけど。
知佳、何、泣きそうな顔、してんの?』
崇人の言葉に、私の目の奥の方がジンジンしてることに意識が集中する。
そうなると余計に何かが爆発してしまいそうで…
『知佳?』
それでも、心配そうに私の顔を見つめる崇人を見て、頑張ろうと思った。
この爆発してしまいそうなものが爆発する前に、崇人に、“好き”の一言を伝えよう、そう思った。