もう、きっと君と恋は始まっていた
『ね、本当に、二人って付き合ったりとかしないの?』
しばしの沈黙の後で、奈々はそう問いかけてきた。
『『ないから』』
またまた返事が重なってしまい、私たちは顔を見合わせる。
“なんで同じタイミングで返事すんだよ”、そう崇人に言われているような気がした。
だから私も“同じタイミングで同じ台詞を言うな”とでも言わんばかりに崇人を見つめる。
『ほら、そうやってアイコンタクトとってる!
口で会話しなくても目だけで会話できるなら、二人共付き合っちゃえ!』
だーかーら!
もう、この男とは別れました!っていうのに。
でも付き合ってる事実さえ、奈々や由樹君には言えなかったし、というか言わなかったし。
だからこの場で、そんな事実と共に心の中の叫びを口に出来る訳もなく…。
『俺は知佳みたいな女は女だとは思ってないから』
しれっとした態度で崇人は答える。
女だとは思ってない?
なら、なんで一緒になんねーとか言ってきたんだよ!
『私だって、レディをレディだとは思ってないクズ野郎なんてお断り致します!』
『ほら、レディとか言いながら、本当のレディが人のことを“クズ野郎”なんて言わねーっての、そういうのも分かんない奴がレディとか笑えるんですけど』
とか言って、本当に笑ってやがる…。
本当にこいつー!!