もう、きっと君と恋は始まっていた
『崇人……。
あのね………』
私の言葉に、崇人は真っ直ぐな目を向ける。
『私……崇人のことが………』
言わなきゃ…!
崇人に伝えたい、“好き”の一言を!
『……好き、なの……』
ようやく言えた、その一言に。
崇人は喜ぶでも、驚くでもなく、ただ、ただ困った顔をしていた。
『………崇人?』
私はその崇人が何故そんな顔をしているのか、それを聞きたくて、崇人の名前を呼んだ。
『……知佳。
お前さ、そういう冗談やめろよ…?』
崇人は視線をそらして、抑揚のない声で、そう私に言った。
冗談…?
“そういう冗談やめろよ”
崇人が放った、その言葉が何度も脳内に響き渡る。
『………………冗談、なんかじゃないよ……?』
私は一刻も早く、脳内で響き渡る崇人の言葉を打ち消したくて。
崇人の目を見つめ、そう言った。
『冗談だろ?
だって、知佳は由樹のことが好きだ、って。
大好きだ、って…そう言ってたじゃん?
なのに、俺にそんなこと言うはずないじゃん…?』
崇人も私の告白に、戸惑ってる様子だった。
『あれだろ?
由樹が奈々とうまくいったもんだから、それで奈々に振られた俺にそんなこと、言ってんだろ…?』
違うよ…
違う…
全部、全部、違うよ!
そう、心では思ってるのに。
喉のところまで、その言葉はきているのに。
それは、でも声となり、崇人には言えなかった。