もう、きっと君と恋は始まっていた
『いや、おしまい、とか言われても終われないから!』
奈々は少々息を荒立てて、そう言葉を発した。
私はそんな奈々を余所に、アセロラジュースを一口飲む。
『知佳、そんな呑気に飲んでないで、なにが無理なのか聞いてこい!!』
行け、そう言わんばかりにどこか遠くの方を指さす奈々、でも私はため息をつく。
『無理なものは無理、それが崇人の出した答え。
私が騒いでも、崇人に面倒かけるだけだよ?
崇人が出した答えなら…私は受け入れるまで、だよ』
そう。
崇人には好きな人がいる、だから私の想いは受け取れない。
そういうこと、なんだから。
『あ、私、今日はケーキをご褒美に食べようかな』
私はふと目に入った、ここのご自慢のチーズケーキの写真を見ながら、そう呟く。
『知佳、俺が奢ってやるよ』
由樹君はそう言うと、そのまま席を立ち、一人レジの方へと歩き出す。
『あ…いいよ、ちゃんと自分で』
『いいよ、その代わり、知佳に協力してほしいんだけど』
私の言葉を遮り、由樹君は不敵な笑みを見せ、そう言った。
私に協力…?
『あ、奈々の分も買ってくるよ』
由樹君は奈々にそう言うと、困った顔をしている私に気づかないふりをしてレジの方へと並んでしまった。
『あたし、今の付け足された感がするんだけど…』
奈々はそう言って、唇を尖らせて、由樹君を見つめる。
『…私に協力ってなんだろう…』
でも、私には奈々の言葉や行動にフォローを入れられる余裕もなく、由樹君がなんの協力を求めているのか、そればかりを考えていた。
由樹君はいつも、私より何もかも知ってる顔をして、私には解読不明な言葉ばかり言ってくる。
うん、今も由樹君からの言葉に頭の中は解読しようと必死だ。