もう、きっと君と恋は始まっていた
由樹君は、会計を済まし、奈々と私の分のチーズケーキを席まで運んできてくれた。
『由樹、ありがとう』
奈々はそう言って、由樹君から手渡されたチーズケーキを頬張る。
一瞬にして奈々の顔が驚きと興奮の顔に変わっていく。
『知佳、これ、すっごい美味しい!』
奈々の異様なまでの興奮した言い方にそそられ、私も一口食べてみる。
口の中に広がるチーズ独特の味、それにちょっと甘めな味に、私の顔も奈々同様に驚きと興奮の顔に変わっていく。
『うん、これ、本当に美味しい!』
私が、そう感想を述べると、それを見ていた由樹君がニコッと微笑んだ。
『二人とも、俺が買ったチーズケーキを食べたよね?』
由樹君の言葉に、奈々も私もクエスチョンが飛び交う顔に変わる。
チーズケーキ…食べました。
崇人に失恋したけど、ちゃんと自分の気持ちを伝えた、そのご褒美のチーズケーキを…
『知佳、明日、崇人の気持ちを確かめてみよっか?』
由樹君はそう言って、怖いくらいの笑みを見せる。
崇人の気持ちを確かめるも何も、私は崇人に失恋していてですね…?
だから確かめる必要はない……
『由樹、どういうこと?』
奈々も由樹君に問いかけ、由樹君は奈々に耳打ちをする。
由樹君から、確かめる、それがどういうことかを聞けた奈々は一瞬怒った顔を見せたけど、“知佳と崇人のためなら…”そう言って、渋々と承諾した様子。
『…あの…えっと、私には…』
そこまで問いかけると。
『うーん、知佳には明日まで内緒。
知佳、演技とか下手だし』
そんなことを言われても、由樹君のその笑顔が怖すぎるよ…。
結局、その日のうちに由樹君から答えを聞ける訳でもなく、私は悶々とした夜を過ごした。