もう、きっと君と恋は始まっていた
私自身も何が起こったのか把握できていなくて。
でも、崇人の方が状況を把握するのに時間はかからなかったようだ。
『……は?
てかさ、何?』
その短い言葉に、由樹君は私から離れる。
でも、私の手を掴んでいる、その手は緩めることはなくて。
『崇人、知佳のこと振ったんでしょ?』
由樹君はそう言って、不敵な笑みを崇人に向ける。
その笑みを見て、崇人は険しい顔に変わっていく。
『だから?』
『奈々と相談して、俺、知佳と付き合うことにしたんだ』
……へ……?
由樹君の言葉に、崇人よりも私の方が驚いた顔になる。
だって、奈々と相談したって……
え、昨日の耳打ちをしていた、あの時の会話はこれ!!?
『由樹、何、言ってんの?
奈々は?奈々はどうすんだよ!!?』
一人、落ち着かない頭を抱えてる横で、崇人はそう由樹君に問いかける。
思わず、私も崇人の言葉に頭を何度も縦に振って、由樹君を見つめる。
『奈々とは本気、知佳とは、うーん…遊びになっちゃうね。
ごめんね、知佳?』
“ごめんね”と言われても、由樹君の言葉についていけない。
だって、由樹君と奈々は両想いで、ちゃんと想いをぶつけ合って、それで再び付き合うことになってて…
『知佳の想いを知ってて…。
なんでそんなことができんだよ!!?』
段々と荒々しくなっていく、崇人の声。
私は由樹君の言葉に、崇人の荒々しい声に、頭を抱えた。