ヘタレな俺の恋
12月30日


結が突然、外出したいって…言い出した

医者の許可をもらい


外に出た


「薫!おばぁちゃんが……え?」


結が電話した時には、佐山のお婆さんは

3日前に、亡くなっていた



「薫!おばぁちゃんが呼んでるの!」


佐山が迎えにきて

結の指示で、とある墓地に来た


そして

佐山家の墓の前で立ち止まる

佐山は、初めて来たらしく

驚いて、座り込む


「薫… 聞いて欲しい

薫のお母さんここにいるの
薫を捨てたって聞いてたんでしょ?

本当はね… 薫を産んですぐ亡くなった

だけど…薫が自分を責めたりしないよう

おばぁちゃん、薫にお母さんが生きていると思わせる為に、嘘ついたの

薫… あたしお母さんの気持ちわかるよ

子供に生きて欲しかった……

自分より、大事な命だから……」


結が佐山を抱きしめた

佐山が結の胸の中で泣いた

子供みたいに

必死に結に抱きついて


結は、俺の方を向いて


「あたしも、薫も……
捨てられたって、勘違いして生きてきた
だけど…愛されてたんだよね
気づかなかっただけ
ねぇ?薫?」


佐山が


結にキスした


「もう!!変態!! 」

「俺…母親を怨んでた……」


結を抱きしめなおした


「ごめん… 結、許して……」

「うん……薫…あたしも薫が大好きだよ」

佐山を抱きしめ

結が俺に手を差し伸べる

その手をつかみ

結と2人で佐山を抱きしめた

お婆さんは、佐山のたった1人の家族

結だって、子供を失ったばかりなのに

佐山の為、笑顔で慰める

そんな、結が眩しくて

泣いてばかりの俺と佐山

男って…ダメだな…

「佐山!!俺も、大好きだから!!」

とにかく、結みたいに思ったこと言いたかった


「ありがとう……」


こんな佐山、初めて見るよ

鼻水垂らして

カッコ悪ぃけど、結の前ですべてを出せる

佐山をうらやましいと思った


佐山が落ち着いて、結が佐山のほっぺを

両手で挟み

「薫…産まれてきてくれてありがとう!
あたしは、産んであげられなかった
だけど…薫はちゃんと産まれて
こんなに素敵な先生になってくれた
佐山先生!!ありがとう!!」

結は、佐山のほっぺにキスをした

「えへへっ……二度としないから!」

「ほんっと、いい生徒もったな……
ありがとう!!七瀬!!
ありがとうな!!森重!!」


俺…何にもしてないから!


佐山と結は、産まれてから、ずっと同じ

愛情に飢えてて

同じ勘違いして

だから、惹かれ合って

とても強い繋がりがあるのに

それでも、2人は恋に落ちなくて

だけど…想い合ってて



本当、敵わねぇな……


佐山が俺と結を抱きしめて、泣く


結が産んであげられなかった子供

佐山と、俺の子供


ちょっと、いや、だいぶ嫉妬するけど


今日、2人は本当に、先生と生徒になった

結が佐山先生と呼び

佐山が結を七瀬って呼んだから


これが、2人の別れなんだって


俺にもわかった


強い絆


俺と結には、あるのかな……?




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