最後のコトバ
Episode.1*やるせない日々
徐々に気温も下がり、冬がそこまで近づいて来た頃、あたしはいつもの場所に立っていた。
そして、一段高くなったところへ片足を乗せて、勢いをつけてそこへ立つ。
立ったとたん、肌に突き刺さるような冷たい風が吹く。
少しだけ、下を覗き込むようにして呟く。
「ここから飛び降りたら死ねるかな……」
ここは、唯一あたしが落ち着ける場所。
何も入っていない空きビルの屋上だ。
フェンスもなく、塀が視界を狭くしているだけ。
そこに乗れば、視界は広がる。
そして、下には車が走っているのが見える。
そんな落ち着ける場所も、今では薄れてきた。
何より、あたしの心がダメージを受け過ぎているからだ。
それもそのはず。
この冬になるまでの1年ぐらい、ずっと同じことをやられ続けているのだから。
とはいえ、その原因をあたしは理解出来なかった。
無駄に美人だとか、すましているとか、勝手に言われている。