最後のコトバ
Episode.2*やさしい温もり
いつものようにあまり人と話さず、言葉の暴力には我関せず。
そうやって過ごした学校から、いつものようにビルの屋上へ向かう。
だけど、屋上への扉に手をかけたとたん、思い出したんだ。
「そうだ、今日は来ちゃいけない」
何も考えずにいつものように来てしまったけど、昨日のことがあった。
それを思い出したあと、扉から手を放して、ゆっくり振り返った。
急いでここから立ち去ろうと思ったんだ。
なのに、振り返ったそこには、満面の笑みで昨日の男が立っていた。
「来てくれたんだっ」
嬉しそうに言う男に、驚いて声が出なかった。
一切音も立てずに、背後に立っていたのだ。
男は、あたしの横を通り、屋上の扉を開ける。
あたしはただ、その様子をボー然と眺めていた。
「早く入りなよ」
動かないあたしを見て、腕を引っ張り中へ入った。