最後のコトバ
彼の言葉を、頭の中で反芻する。
慣れない言葉に、顔が熱くなるのが分かる。
つい、手で自分の頬を触ったのを彼は見逃さなかった。
「へぇー、無表情って訳でもねぇな。照れているし」
あたしを覗き込むようにして、彼は言う。
照れていると分かるぐらい、あたしの顔は赤くなっているらしい。
「見んなっ」
片手で自分の顔を隠す。
それと同時に、まだ自分には他の感情があったのだと驚いた。
普段出ることのない感情の止め方が分からなくて、顔の熱が引かない。
その様子を見られたくなくて、すぐにでも立ち去りたい。
だけど、手は未だに掴まれたまま。
「手、放して……」
掴まれている手とは反対の手で顔を隠したまま、呟くように言う。
「嫌だよ」
だけど、すぐさま否定された。