最後のコトバ



彼の言葉を、頭の中で反芻する。

慣れない言葉に、顔が熱くなるのが分かる。

つい、手で自分の頬を触ったのを彼は見逃さなかった。



「へぇー、無表情って訳でもねぇな。照れているし」



あたしを覗き込むようにして、彼は言う。

照れていると分かるぐらい、あたしの顔は赤くなっているらしい。



「見んなっ」



片手で自分の顔を隠す。

それと同時に、まだ自分には他の感情があったのだと驚いた。


普段出ることのない感情の止め方が分からなくて、顔の熱が引かない。

その様子を見られたくなくて、すぐにでも立ち去りたい。

だけど、手は未だに掴まれたまま。



「手、放して……」



掴まれている手とは反対の手で顔を隠したまま、呟くように言う。



「嫌だよ」



だけど、すぐさま否定された。




< 14 / 83 >

この作品をシェア

pagetop